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第6回 大人 佐々木ののかさん (文筆家)


    〈ゲストの佐々木ののかさん(右上)と手話通訳者の橋本さん(右下)〉 今回の「おとな」は文筆家の佐々木ののかさん。佐々木さんは「家族と性愛」をテーマに、エッセイやインタビュー記事の執筆をメインに、映像の構成、ディレクションなど多様な活動を展開しています。 今回は新型コロナウイルス感染症拡大の影響もあり、オンラインでの開催となりました。画面越しではありますが、佐々木さんは「家族と性愛」についての多様な考え方、価値観などをお話ししてくださいました。コロナ禍をきっかけに家で過ごす時間が増え、家族や人との距離感、関係性が変わりつつある今だからこそ、改めて家族や愛について考えさせられる内容でした。

最初に、佐々木さんからご自身のプロフィールについて紹介がありました。佐々木さんは北海道出身。大学は筑波大学国際総合学類に入学。元々英語が得意だそうですが、大学に入学すると自分よりも英語が得意な人が多い事に気づき、英語を活かした仕事に就くことを断念。文章を書くことも好きだったので執筆の勉強もされていたそうです。大学卒業後は東京のかばん屋に就職。しかし、そこで、男尊女卑的な雰囲気や社内の産休・育休制度への違和感を抱いたそうです。そして会社を辞め、フリーライターになります。フリーライターになった当初、佐々木さんはライターとしての実績がなかったため、実績づくりのために出版社や企業に無償で記事を書くと直談判をしたこともあったそうです。

次に「家族」をテーマにお話がありました。ここでは佐々木さんが今まで取材した人達の、家族に関する考え方や価値観について3つの事例を交えて紹介してくださいました。

一つ目は、結婚しないことを前提に子どもを産み、育てる「選択的シングルマザー」。結婚しないことを前提にして妊娠しているため、離婚してシングルマザーになった方や、妊娠してから結婚しない選択したシングルマザーの方とは異なります。選択的シングルマザーは、結婚(パートナーシップ)と子育てを分けることができます。良好な夫婦関係の維持も決して簡単ではなく、その上に子育てが重なると更に負担がかかる可能性があるため、子育てだけをしたいという理由で、選択的シングルマザーになる方もいます。結婚しないことによって、かかる負担を軽減できる場合もあるのです。

二つ目は、約束事を決めてする「契約結婚」。契約結婚で決めた約束事の範囲内であるかどうかが大切で、一般的な結婚のきまりにとらわれないとするものです。佐々木さんから聞いたお話の中では、別居したり、財産を別々にしたり、恋人を他に作ったりといった例がありました。

三つ目は、親だけではなく、子育てに関わりたい大人たちが子どもの育児に参加する「共同保育」です。親以外の人が育児に参加することで、子どもが家庭以外にも安心できる場所をもち、親の育児に対する不安やストレスを減少させられる可能性もあります。

以上の話を踏まえた上で、このテーマで佐々木さんが伝えたかったことは、「家族は一人ひとりに合ったかたちで作っていける」ということです。元からある制度に従うのではなく、自分で選択し、自分に合った家族を作ることができるということを学びました。

そして、「家族」のテーマのお話の最後には、佐々木さんから参加者に「どんな家族を作りたいか」という問いが投げかけられました。参加者からは、「いつでも帰れるような居場所」「近すぎず、遠すぎない関係」「冗談を言い合えるような関係」など様々な答えが出ました。

その後、「性と愛のかたち」についてのお話がありました。このテーマに入る前に佐々木さんは、「結婚ってどんなかたちをイメージしますか?」という問いを参加者に投げかけました。参加者は、画面越しでそれぞれ、結婚と聞いて思い浮かぶポーズをしました。「手の甲(指輪)を見せるポーズ」「お手玉をしているポーズ」「両手で丸い形を作ったポーズ」など、それぞれ違うポーズで表現していました。

    〈結婚についてのイメージをそれぞれポーズで表現する参加者〉 「性と愛のかたち」についても、佐々木さんは自分が実際に出会ってきた人達のお話を紹介してくださいました。

一つ目は、「全ての人が恋をするのか?」というお話。現在の日本ではいわゆる「恋愛結婚」が主流ですが、恋愛感情を持たない「アロマンティック」、性的に惹かれない(性的欲求がない)「アセクシャル」といったセクシュアリティも存在します。また、「リスロマンティック」というセクシュアリティも存在します。こちらは、相手に恋愛感情を持つが、その相手から恋愛感情を持ってもらうことを望まないセクシュアリティです。

二つ目は、「そもそも一人の人しか好きになってはいけないのか?」についてのお話です。ここでは「ポリアモリー」という言葉についてお話がされました。ポリアモリーとは、パートナーの同意を得て、複数の人を一度に愛する生き方です(さまざまなポリアモリーの方がいるので例外もあります)。

このテーマで佐々木さんが伝えたかったことは、性と愛のかたちも人それぞれであり、人と違っても良いということです。佐々木さんから「アロマンティック」や「ポリアモリー」という言葉のもつ意味や、様々な生き方について教えてもらうことで、人と違うことで落ち込む必要はないのだと思うことができました。

今回のお話は、第4回目の「おとな図鑑」のゲストにマダム ボンジュール・ジャンジさんをお呼びした時のテーマであったセクシュアリティやLGBTのお話しと重なる部分がありましたが、その回とはまた別の考え方を知ることができました。家族にも性愛にも共通していることは、「人の心」だと思います。一人ひとりに合った家族、恋愛のかたちを実現するために、今回佐々木さんがお話しされた生き方や価値観が存在するということが世の中に広がれば良いと思いました。家族や恋愛のかたちに正解や不正解はなく、周りと同じでも違っていても美しいと私は思います。私自身、自分が大事にする価値観を築いていきたいと思います。もちろん、他にも様々な恋愛、結婚に対する考え方や価値観、生き方があるので、私ももっと色々な考え方を知り、伝えられるようにしたいです。

第6回おとな図鑑実施日:2021/2/28

(テキスト:学生ボランティア 折原聖太)

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