「イエス!フューチャー!」
第4回目の大人はマダム ボンジュール・ジャンジさん。ジャンジさんはパフォーマー、またドラァグクイーンとして世界中で活躍されています。更に新宿二丁目にあるHIVやセクシュアルヘルスに関する情報センター&オープンスペース「コミュニティセンターakta」のセンター長も務めておられます。 今回は、セクシャルマイノリティやLGBTというテーマに、ジャンジさんのこれまでの半生を交え、お話を伺いました。
LGBTとはレズビアン、ゲイ、バイセクシャル、トランスジェンダーを総称した言葉です。そして日本における割合は7.6%、13人に一人の値です。(電通ダイバーシティ・ラボ2015LGBT調査より)これは、血液型のAB型と同じくらいの割合だそうです。 まずジャンジさんは、ご自分のお話をしてくださいました。小学生の時、サッカー部に入りたくて担当の先生に相談したら、「女子はだめだ」と断られて、気持ちがブルーに。今では女子サッカーはよくある話ですが、当時の社会的な意識の中ではサッカーは男子がするスポーツとなっており、女子は我慢するしかなかったそうです。女性だから、男性だからしてはいけない事って、何でしょう?
その後、進学し、ファッションの世界と出会います。ジャンジさんは、ファッションが決めつけや固定概念 を超える事に気付き、自由の象徴であることに魅力を感じ、その世界で仕事をはじめます。 しかし、常に周りや社会から「女性」として求められることや自身の心と身体に違和感を感じ、そのことについて調べて、手術を考えたりします。誰にも相談できず、性のあり方についての心の問題を一人でずっと抱えていたそうです。そんなある日、海外のパフォーマー「リンゼイ・ケンプ」のカンパニーを観に行ったそうで、その時見た舞台、音楽、ダンスに影響され、「なんて美しくて楽しい世界があるんだろう!」と思い、ジャンジさんもダンスをはじめます。そして自分のありのままのダンスをみんなが受け止めてくれたとき、心と身体と魂が一致して、「そのままの自分で良い、自分を全部使って楽しく生きる」ことを決心。
十年間勤めたファッションの仕事を辞め、ダンスやパフォーマンスをすることになりました。トークの中で、スクリーンに映し出されたジャンジさんの写真では、カラフルな衣装を着たり、自らがミラーボールになったりと、とても華やかで印象が強い演出でした。
その後、話を少し広げてLGBTについてお話しいただきました。LGBTに関する理解や対応は現在の日本社会における課題の一つです。ずっと自分の居場所をさがしていたジャンジさんは、「ジューシィー!」という、だれでもOK!で、いろんなセクシャリティや肌の色の人たちが集まるAll Mixの交歓のパーティを創りました。そして友達に誘われて「akta」で働くようになり、LGBTやHIV陽性者、生きづらさを抱えている人たちが、話しづらい事を話せる場所になればと願ってきました。「性」の話は友達や家族でさえ打ち明けづらいことです。しかし、場所があることで安心できる、生きづらさをなくすことができます。 そしてこの場所が継続できるようにジャンジさんは仲間と「NPO法人akta」をつくりました。「居場所がないなら創る」この世界にないものを創ることの大切さを伝えていただきました。「We’re already living together.」とは「私たちはすでに共に生きている」ということで、マジョリティもマイノリティも共に生きていることを学びました。
その後、スクリーンにオセロをしている人が映し出されました。映像の中では、オセロの白黒の駒を、二分化された価値観の象徴としていますが、そこにグレーが入り、更に赤や青などの色が入り、オセロ盤がカラフルになりました。世界は白、黒、グレーだけではなく、あらゆる色が溢れ出している事を表現されていました。そもそも性というものには大小様々に揺れがあり、白黒のようにはっきりとしたものではなく、たくさんの色のグラデーションで存在しているものなのです。多様性が未来を創る。ひとつの決まった未来ではなく、本当はカラフルな世界に気がつくことで、思いがけない様々な未来を創出します。 最後に絵本の読み聞かせをしてくださいました。読み聞かせで披露してくださった本はトッド・パール作、 『人と違っていてもオッケー』です。「オッケー!」の一声から読み聞かせが始まりました!この本はジャンジさん自身も好きな本であり、人と違っていても良い、どんな自分でも良い、あなたはあなた、自分は自分。そのままの自分が大事とういうことを伝えてくれました。お客さんも一緒に「オッケー!」と言ってくれて、大盛り上がりでした。
今回の講演を聞いて、また一つ、自分の価値観が変わったり、知らないことも知ることができました。言いたいのに言えない、自分らしくいられない人はまだまだたくさんいます。ジャンジさんのように、ありのままの自分を見せたり、居場所を創ったりするのは相当な覚悟と勇気がいると思います。とても強い方だと思いました。自分もありのままで生き、個性を大切に、そして他人の個性も受け入れようと改心しま した。統一化が多いこのご時世ですが、皆がそれぞれ自分らしく生きれるように、そして周りもその個性を受け入れられるようになる世の中になって欲しいと思いました。 第5回おとな図鑑実施日:2019/9/7 (テキスト:折原聖太、写真:鈴木竜一朗)
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